「馬鹿だろ」
やっと出た言葉だった。
「そうかも」
翡翠は笑う。
「でも心配だったし」
またその言葉。
心配。
ずっとそうだった。
初めて会った日からどうしてそこまでできるんだ。
どうして自分なんかに。
「神城くん」
「何」
「少し顔色良くなった」
嬉しそうだった。
本当に嬉しそうだった。
その時スマホが震えた。
翡翠だった。
画面を見る。
『緋色』
表示されている。
「ごめん」
翡翠が立ち上がる。
「電話出るね」
美都は小さく頷く。
そして翡翠が部屋を出た瞬間だった。
胸の奥がざわつく。
急に静かになる。
さっきまで平気だったのに。
苦しい。
落ち着かない。
数分のはずなのに長く感じる。



