雨は少しずつ強くなる。 翡翠は慌てて鞄を開いた。 「よかった」 折り畳み傘を取り出す。 ぱっと開く。 「ほら」 美都の方へ傾けた。 「入って」 美都は動かない。 雨音が耳に響く。 胸が苦しい。 呼吸が浅い。 そんな中。 翡翠だけが真っ直ぐこちらを見ていた。 「神城くん」 優しい声だった。 「大丈夫?」 その言葉を聞いた瞬間。 不思議と少しだけ呼吸が楽になる。 雨は嫌いだ。 今でも。 でも。 翡翠がいる。 そう思った瞬間だけは。 一人じゃない気がした。