父親が出ていった日。 雨だった。 母親がいなくなった日も。 雨だった。 玄関。 閉まるドア。 遠ざかる背中。 雨音。 思い出したくもない記憶が勝手に蘇る。 「神城くん?」 翡翠の声が聞こえる。 気付けば足が止まっていた。 「どうしたの?」 「……何でもない」 声が少し掠れた。 自分でも分かる。 顔色が悪いことくらい。 でも。 言えるわけがなかった。