「上がる?」
気付けばそう聞いていた。
翡翠が少し驚く。
「いいの?」
「別に」
いつもの返事。
翡翠は笑った。
「じゃあ少しだけ」
家へ入る。
リビングへ案内する。
静かな部屋だった。
生活感はある。
でも温かさがない。
翡翠は少しだけ胸が痛くなった。
この家で神城くんはずっと一人だったんだ。
「お茶いる?」
翡翠が聞く。
「勝手に人ん家の台所使うな」
「じゃあ座ってて」
翡翠が台所に向かう。
その背中を見た瞬間だった。
ふっと視界が揺れる。
昨日も寝ていない。
その前もまともに眠れていない。
限界だった身体が傾く。
「神城くん!?」
翡翠が慌てて駆け寄り倒れそうになる身体を受け止める。
「大丈夫!?」
「……平気」
全然平気じゃなかった。



