家の前まで来る。
「じゃあね!」
緋色は元気に手を振った。
「またね、神城さん!」
そのまま家の中へ入っていく。
ドアが閉まる。
静かになる。
翡翠はその背中を見送ってから。
少しだけ申し訳なさそうに振り返った。
「ごめんね」
「何が」
「緋色のことばっかりで」
美都は少しだけ目を細めた。
「別に」
いつもの言葉だった。
でも。
心の中は少しだけ違った。
緋色を見ている時の翡翠は。
本当に嬉しそうだった。
本当に大事そうだった。
それが分かった。
だから。
少しだけ面白くなかった。
理由は分からない。
緋色に嫉妬しているわけじゃない。
そんなはずない。
ただ。
あんな顔をする翡翠を見ていると。
胸の奥が少しだけざわつく。
その感情の名前を。
美都はまだ知らなかった。



