美都はスマホを握り締める。
連絡先。
通話履歴。
メッセージ。
全部翡翠だった。
少し前まで誰とも連絡なんて取らなかった。
必要なかったし一人でよかった。
そう思っていたはずなのに。
「……」
静かな部屋。
返事のない空間。
その時頭の奥で何かが蘇る。
雨の日閉まるドアに父親の背中。
『ごめんな』
その一言だけ残して父親はいなくなった。
雨の音だけが響いていた。
そして数年後。
母親も消えた。
何も言わず振り返りもしなかった。
また雨だった。
「……どうせ」
ぽろりと零れる。
自分でも驚くほど小さな声だった。
「どうせいなくなる」
誰に向けた言葉なのか自分でも分からなかった。



