おいしそうに食べる後輩が、ずるい〜年下くんの一途な溺愛〜


六月に入って、梅雨がやって来た。雨の日が続くと、店の選択肢が絞られる。

その日は、雨脚が強かった。外に出る気になれず、社員食堂に向かっていると、後ろから「水野さん」と声がかかった。振り返るまでもなく、橋本くんだとわかった。

この二ヶ月で、私は彼の声のトーンを、すっかり覚えてしまっていた。

私たちは向かい合って席につく。橋本くんはしょうが焼き定食、私は豚汁定食にした。食堂の窓に、雨粒が筋を引いて流れていく。

「水野さん。最近、元気ないですよね」

「……そう見える?」

「見えます。ランチのとき、あまり食べてないし」

言われてみれば、この一週間、食欲が落ちていた。毎年六月になる度に、あの頃の記憶が浮かんでくる。出会ったのも別れたのも、雨の季節だったから。

「ちょっと、色々あって」

「話せそうなら、聞きますよ」

橋本くんはそう言って、しょうが焼きに箸をつけた。黙って食べ始める。

少しして、彼がぽつりと言った。