おいしそうに食べる後輩が、ずるい〜年下くんの一途な溺愛〜


店を出ると、夜風が肌を撫でた。七月の終わり、陽が落ちても熱気がまだ地面に残っていた。

「駅まで送ります」

「遠回りになるじゃない」

「麻衣さんと、少しでも長く一緒にいたいんです」

頬が熱くなった。

私たちは、並んで歩いた。いつも私の半歩後ろにいた碧くんが、今夜は隣にいる。

歩きながら彼の手が私の手に触れて、そのまま指が絡んだ。さりげなく、でも確かに。私たちは歩調を変えずに、繋いだまま歩き続けた。

駅の手前の角で、碧くんが立ち止まった。街灯の下で、四月の定食屋からずっとそうしてきた目で、私を見た。

「麻衣さん」

「なに?」

「少し考えさせて、の答え、もらってもいいですか」

ちゃんと言葉で、と思っているのだろう。この人は、うやむやにしない。

答えは、もう決まっていた。四月の最初の火曜日から、本当はずっと。

私は、言葉より先に背伸びをした。

碧くんの唇に、自分の唇を重ねた。

一秒、二秒。

熱を孕んだ夜風が、二人の間を抜けていった。

離れると、碧くんが大きく目を見開いていた。あの、何事にも動じない完璧な後輩の顔が、今夜だけ、子どもみたいに驚きに染まっている。

碧くんは自分の唇にそっと指先を触れ、掠れた声で呟いた。

「……それが、答えですか?」