おいしそうに食べる後輩が、ずるい〜年下くんの一途な溺愛〜


梅雨が明けたのは、七月の第二週だった。

その週の金曜日に、部署の飲み会があった。会場は恵比寿の駅近くにある居酒屋で、掘りごたつの個室だった。

橋本くんは、私の斜め向かいに座っていた。穏やかに場に溶け込んで、話しかけられれば答えて、笑うべきところで笑う。料理が運ばれる度に表情が少しだけ変わる。

ふと、自分が橋本くんのことばかり気にしていることに気づいた。見ているのではなく、気になっている。

いつから、こんなふうになっていたのだろう。気づかないふりをしたまま、私はグラスに口をつけた。



お開きになったのは、二十一時を回った頃だった。私は明日の企画書の締め切りがあったので、二次会を断った。

七月の夜は蒸し暑くて、ビルの間から見える空には星がなかった。

「水野さん、どっち方面ですか」

声がして振り返ると、橋本くんがいた。ジャケットを手に持って、ネクタイを少しだけ緩めている。飲み会のあとの、ほんの少し崩れた姿が妙に目に馴染んだ。

「恵比寿から渋谷方面」

「同じです。一緒に駅まで行きましょう」