婚約が嫌で男装執事になったのに~配属先が婚約者の元でした~【完】


はちゃめちゃな告白をした私の隣から、くすくすと可愛いらしい笑い声が聞こえてきた。



ハッとして、涙でぐしゃぐしゃの顔のまま隣を見ると、クリスタル様が美しい金髪を揺らしながら微笑んでいた。




「うふふっ……ギル様の婚約者様は、こんなにもあなた様のことを思っていて……素直でとっても可愛いらしいお方だったのですね……」


「ふえっ……?!」



その言葉に目を丸くする私に、クリスタル様は切なそうに……、だけど優しい瞳で私を見つめてきた。



「いつも完璧なギル様を一瞬でこんな表情にできるだなんて……ふふっ、私には到底無理ですわ。

……私の負けですわね」



悲しそうなのにどこまでも上品に笑うクリスタル様。


私は、あんなにも失礼なことを言ったはずなのに……心まで綺麗なクリスタル様。


クリスタル様のそんな姿に驚いて涙が引っ込んでしまった。




すると、私のすぐ近くでくすっと、低く聞きなれた笑い声が聞こえてくる。


ギル様は流れるように私の腰に手を回すとぐいっと引き寄せた。



そして、クリスタル様に向かって綺麗に一礼をする。



「……ご覧の通り、嫉妬で暴走してしまう私の婚約者はとても可愛いらしいんです。

婚約破棄をしなかったのは、私が彼女にこれほど惚れているからです。

本日は申し訳ございません」


「……なっ……?!」



不意打ちの惚れてる発言に、顔が真っ赤になって慌てる私を、クリスタル様は楽しそうに笑った。




「ふふふっ……本当に可愛いらしい方ですわね。少し羨ましいですわ。

……では、お邪魔してはいけませんね、私はそろそろ失礼しますね。

本日はお越しいただいてありがとうございました」




クリスタル様はそう言うと上品に笑い、大勢の使用人たちを引き連れて、優雅に奥の建物にさがっていった。