ぎゅっと腕に力を込めるアル様に、驚いて顔を上げた私。
その瞬間ぱちっと目が合うと、真剣な顔をしたアル様。
「ねぇ、リオ……俺と一緒にどこか遠くへ逃げない?」
「……え?」
「何度も言ってるけど、ギルのことでそんなに苦しむくらいならさ……、全部捨てて俺のところにおいで?
本気だよ……俺とここから逃げない?」
アル様の目は本気だ。
あまりの辛い状況に、その誘いに心がぐらぐらと揺れる。
こんなにも苦しいならば……何もかも忘れて優しくて大好きなアル様と、どこかへ逃げてしまうのもありかもしれない……
と、心の中で思ってしまった。
そして、私は力なく笑うと決める。
あぁ……もういいや……逃げよう……
そう決めて頷こうとした。
なのに、それを止めるみたいに
私の脳裏には、走馬灯のようにたくさんの光景が思い浮かぶ。
なんでこんな時に?反則じゃん
って、思うけれど頭の中で記憶の蓋が弾けたかのように、次から次へとたくさんの映像が流れ込んできてとまらない。
意地悪に笑うギル様との初めて出会ってから今日までの日々。
それと同じくらい、公爵邸で出会ったみんなとのあたたかくて愛おしい日々が頭の中を駆け巡る。
どこかに逃げてしまいたいのに、ギル様のことだけじゃない……、一緒に思い出すのはあたたかい屋敷のみんなとのたくさんの楽しかった日々にまた涙が溢れてとまらなくなる。



