婚約が嫌で男装執事になったのに~配属先が婚約者の元でした~【完】



ぎゅっと腕に力を込めるアル様に、驚いて顔を上げた私。


その瞬間ぱちっと目が合うと、真剣な顔をしたアル様。



「ねぇ、リオ……俺と一緒にどこか遠くへ逃げない?」


「……え?」


「何度も言ってるけど、ギルのことでそんなに苦しむくらいならさ……、全部捨てて俺のところにおいで?

本気だよ……俺とここから逃げない?」



アル様の目は本気だ。


本気の誘いに心が、ぐらぐらと揺れる。



こんなにも苦しいならば……何もかも忘れて優しくて大好きなアル様と、どこかへ逃げてしまうのもありかもしれない……


と、心の中で思ってしまった。



そして、私は力なく笑うと決める。



あぁ……もういいや……逃げよう……



そう決めた……その瞬間……




走馬灯のように私の脳裏に浮かぶのは、意地悪に笑うギル様。


だけれど、それだけじゃないの……


それと同じくらい、公爵邸でのあたたかくて愛おしい日々が頭の中を駆け巡る。



どこかに逃げてしまおうと思ったのに、たくさんの思い出にまた涙が溢れてとまらなくなる。