婚約が嫌で男装執事になったのに~配属先が婚約者の元でした~【完】




私は馬車が停めてある場所まで走ると、馬車の影に隠れてその場に泣き崩れた。



どうしようもないほどの涙が、次から次へと溢れてきて両手で顔を覆った。


嗚咽がこぼれて止まらなかった。
胸が張り裂けそうだった。


もうあんな二人見たくないよ……っ



すると……

「……はぁ、はぁ……リオ」

息を切らす聞きなれたアル様の、優しい声が頭上から降ってくる。



けれど、今の私は涙がとまらなくて顔をあげることなんてできなかった。


アル様は息を整えるとゆっくりと私の前にしゃがみこんで、切なそうな声で私に声をかける。


「……そんなに、辛かった……?」



私は時たま嗚咽をこぼしながら、顔を覆ったままこくこくと頷いた。


次の瞬間、アル様は大きな腕で私を力強く抱きしめた。


「……だから、俺にしとけばって言ったじゃん……」


耳元で聞こえる小さなアル様の呟き。