婚約が嫌で男装執事になったのに~配属先が婚約者の元でした~【完】



アル様が私に振り返ると、目を見開き心配そうに小さな声で声をかけてきた。


「……リオ、大丈夫?」

「……えっ?」

「涙……出てるよ?」



アル様のその言葉に、私はハッとして自分の頬を撫でる。すると、頬が濡れていてはじめて自分が泣いていることに気がついた。


「あ……あれっ……?な、なんでだろう……こんなはずじゃ……。

す、すみませんアル様、ちょ、ちょっとお手洗いに行ってきますっ……!」



私は涙を拭うと、心配させたくなくて無理矢理へにゃりと笑顔を見せた。

心配させたくないし、これ以上目の前の光景だって見ていたくない。



私は、その場から逃げるように全力で走って離れた。


「リオ……っ!!待って!!」



後ろからアル様の声が聞こえたけれど、走り出した瞬間堪えてた涙が次から次へと溢れる。

流れる涙に情けなくて、振り返ることも立ち止まることも出来なかった。



意地でも、この目で確かめようと思っていたのに……っ!!


だけれど、いざ二人を目の前にすると、いろんな気持ちが溢れて涙が止まらない。



他の女の人と楽しく話すギル様。
私以外に優しく触れるギル様。

全部全部、見てられなかった。



私は思ったよりも嫉妬深くて厄介な女だったみたい。こんなこと、気づきたくなんてなかったよ……。


ギル様のバカ。