婚約が嫌で男装執事になったのに~配属先が婚約者の元でした~【完】



やがて、ギル様の前まで近づいたクリスタル様の声が聞こえてきた。


「今日もお忙しい中、起こしくださってありがとうございます。とても嬉しいですわ、ギル様」

「こちらこそお招きいただき大変光栄です。今日も心より楽しみにしておりました」



ギル様は、社交の時に見せる甘く美しい微笑みを向けていた。

流れるように優雅にクリスタル様の手を取ると、その手の甲へそっと唇を落とした。



ただの挨拶だって知っているし……ギル様のあの顔は社交の顔だってのもわかっているのに……

私の胸はズキズキと痛み出す。


なによあれ……、私には意地悪なくせに……あんなに優しくしちゃってさ……

本当かっこよくて王子様みたいで悔しい……。



そして、手の甲にキスをされたクリスタル様は、頬を可愛いらしく染めて、とても嬉しそうに笑っていた。


その姿にハッとする。

クリスタル様は、私と一緒でギル様に恋をしているんだ……と。