ギルside
──あの夜会から数日、俺は今ロゼッタ侯爵邸に訪れている。
あの日、彼女のメイドだというルリが謝罪に来た。その時に、俺は聞きそびれた空から降ってきたあの令嬢の名前を聞きだした。
彼女は、リリィ・ロゼッタ侯爵令嬢。
屋敷に戻った俺は、すぐに調べをまわした。
あまり公の場に出てこない彼女の情報は少なかったが、ロゼッタ侯爵家の一人娘でかなり溺愛されているようだ。
大切に育てられた彼女は、婚約者がいないことが判明した。
情報の少ない彼女だが、それが分かっただけで十分だった俺は、すぐに準備に取り掛かった。
そして今日、リリィを尋ねてロゼッタ公爵邸まで訪れたのはいいのだが……やはり一筋縄ではいかないようだ。
ロゼッタ侯爵の話によれば「具合が悪い」らしい。
わかりやすい嘘をついて俺を拒絶するリリィ……俺に会う気がないようだな。
だが、俺にとってはそれがなんとも愉快だった。
俺が今まで見てきた令嬢たちは、見た目や家柄にすり寄り、媚びや女を売ってくるそんな女たちしか知らない。だけれど、彼女はどんな令嬢たちとも違っていて、それがすごく面白い。
俺の目に狂いはなかったと、ますます興味が湧いてくる。
リリィを俺のものにするにはどうするべきかと考えるだけで、面白すぎて自然と笑みがこぼれた。
こんな感情は、いつぶりだろうか。



