婚約が嫌で男装執事になったのに~配属先が婚約者の元でした~【完】



執務室に入ると、机で汗を拭いながらペンを握るギル様がいた。


その姿を見て思う。
体調の悪い中、人のためにこんなに頑張れる人なかなかいないよ……。



私はギル様に近寄ると、邪魔にならないようにただただ静かに隣に立った。

そんな私を不思議そうに見るギル様。



「どうした?部屋に戻らないのか?」

「えと……心配なので、終わるまでここで待ってますね」

「ふっ……意外に頑固なんだな?」



ギル様は小さく笑うと、私を追い返そうとはしなかった。

静かな部屋でギル様のペンを動かす音だけが響いていた。



この感じ……なんか悪くないかも。


そう思いながら、真剣な顔で書類を見つめるギル様の横顔をじっと見つめる。



忙しい人なのは知ってたけど、なんやかんや仕事をしている姿は、初めて見た。


こんなに綺麗な顔をして見た目だけだと思っていたのに……、ギル様って責任感があってみんなのことを、とても大切に思っている人だったんですね。



静かな空間で私は、そんな風に思った。


その日ゆっくり静かにすぎていく二人きりの夜は、私の価値観が少しだけ変わった日になった。