今日はついに、星の宮祭~体育祭~の日だ!
初日は体育祭。
今年の体育祭で行われる種目は、
100m走・障害物競走・借り物競走・大縄跳び・綱引き・クラス対抗リレー。
そして、体育祭最大の見せ場――応援合戦。
勝利を目指して全力で走る者。仲間と力を合わせる者。誰かの活躍に胸を高鳴らせる者。
それぞれの想いを抱えながら、生徒たちは熱い一日を迎えようとしていた。
……この日が、私にとって忘れられない思い出になるとも知らずに。
私は足が速い(と言われたので)100m走に出る。
毎年、一番人気なのは借り物競争だ。お題に「好きな人」とか「伝えたいことがある人」の場合、カップルが成立するのだ。
玲央くんは借り物競争にでるみたい……。足速いし、優勝できそう……。
今年は「赤組」だ。赤い炎のように燃えて、頑張る!!
いよいよ始まった、体育祭!
初めの種目は100m走なので、私はスタンバイしていた。3番目に走る。
「いちについて、よーい……ドン!」
ついにきた。次は私の番。一応だけど……、100m走、12秒なんだ。
「いちについて、よーい……ドン!」
私はその声が聞こえた瞬間、走り出した。横には3人ほどいる。
でも、ここで差をつけて……抜かす!!
と思った瞬間、靴の紐がほどけ、その紐のせいで転んでしまった。
走っていた人たちはもう、みんなゴール目前。
なんで、こうなるの……。
私は立ち上がり、走ろうとした。
だけど、無理だった。今日の朝から、貧血気味でもあったので、頭がふらふらしてきた。
もう、倒れる……。
土に叩きつけられると思った。けれど、体を受け止めたのは予想外に柔らかな感触だった。
「大丈夫?」
かすかに聞こえた優しい声……。
でも、私は意識が遠くなっていて、よく分からなかった。
周りからは「キャー!!!!!」というものすごい声が聞こえた気がする……。
そこで私の意識はプツっと途切れてしまった。
そして、目を開けた時は屋内だった。
ここは、保健室……???
私はベットから体を起こした。隣に居たのは……。
「大丈夫なの?」
「え……? 川口くん⁉」
「あ、うん……。今、障害物競走終わったところ。俺、借り物競争出るんだけど、一緒に行かね? 体が大丈夫なら」
「あ、うん。もう、大丈夫! あとは応援するだけだし。テントの中だし……。行く!!」
「あ……じゃあ、行こう……」
『ただいまから、借り物競争をはじめます。出場者は入場門に来てください。繰り返します……』
「あ、急がないと……」
私は走り出した。川口くんも一緒に走り出した。
「あれ、大丈夫だったの……? べ、別に心配してるわけじゃない……けど」
心配してくれてるんだね……。きっと……。
「ちょっとだけだけど、貧血だから、大丈夫。心配してくれてありがとう!!」
「心配ありがとう!!」
「だから、別に心配……してねーし!!!」
「ははぁ……。そう? ごめんね」
……と会話してるうちに入場門に着いた。
「じゃあ、ファイト!」
「あ、そう。また!」
川口くんって、ツンデレ? 素直になれないよね……。本当に……。
『さぁ、借り物競争がはじます! お題は何を引くんでしょうか?』
「いちについて、よーい……ドン!」
私はすぐに分かった。
川口くんがどこにいるか。私は川口くんから目を離せなくなってしまった。川口くんのあの、優しさ。あの優しい声。優しい仕草。
全部全部、川口くんのいいところだよ……。
川口くんは今、お題を引きいや~な顔をしてる。お、これは変なお題だったのかな?
川口くんは二年三組のテントに向かって走ってきた。
「愛原、ちょっと来て!」
愛原さんが呼ばれてる……誰だ~?
周りを見渡すと、みんなが私を見ている。
あ、ああああああああああああ、愛原って私だったーーーーー!!!!!!
私は川口くんの元に走っていく。
「愛原さん、大丈夫? 走れる?」
「あ、走れるよ!……って、きゃ!」
なんと、川口くんが私をお姫様抱っこしたのだ。彼なりの優しさ……なのかな?
周りはものすごく興奮している様子。でも、わたしにはそんな声が聞こえなかった。
だって……。今は、川口くんから目が離せないんだもん……。
見事、川口くんは一位でゴールした。
川口くんは私を降ろしてくれた。
「あ、ありがとう。でも、大丈夫だった? 私、重いでしょう……?」
「軽かったし……。って、別にお世辞じゃないからな? マジだから!」
「軽かった? 私重いと思うんだけど。お世辞、ありがとう!」
「お世辞だと思うなら、お世辞って捉えて!」
でも、結局お題って何だったんだろう……。
ひとりひとりお題発表の時間だ。
「それじゃあ、一人ずつお題を発表してもらいます!」
先生の声に、運動場がざわついた。
発表は最下位から。
「第十位、田中!」
田中くんが前に出て、お題を読み上げる。
「『初恋の人』です」
周りから「おおー!」と声が上がった。
その後も……。
「第九位、『家族』」
「第八位、『親友』」
「第七位、『後悔したこと』」
次々と発表が進んでいく。
みんなのお題を聞きながら、私はそっと川口くんの方を見た。
いつもと変わらない表情。何を考えているのか、全然分からない。
そして、ついに――。
「第一位、川口!」
教室が少し静かになる。
川口くんは席を立つと、ゆっくりと前へ出た。紙を見つめる。
数秒の沈黙。そして、静かな声で読み上げた。
「……『嫌いな人』」
その瞬間、周りの空気が変わった。
笑っていたクラスメイトたちも、思わず顔を見合わせる。
『初恋』でも、『好きな人』でもない。
『嫌いな人』。
川口くんは何も言わず……。
だけど私は、なぜか目を離せなかった。
彼は、一体なんで、イヤな顔してるんだろう……。
その後、大縄跳び・綱引き・クラス対抗リレーが一瞬のように終わった。
結果は赤組の大勝利だった。
勝ててよかった……。
だけど、わたしの心ではただ一人……。
川口くんのことが忘れられない……。川口くんのことを考えてしまう……。
変なの、私……。
まさか、この日が一生の思い出となるとはまだ知る余地もなかった。
初日は体育祭。
今年の体育祭で行われる種目は、
100m走・障害物競走・借り物競走・大縄跳び・綱引き・クラス対抗リレー。
そして、体育祭最大の見せ場――応援合戦。
勝利を目指して全力で走る者。仲間と力を合わせる者。誰かの活躍に胸を高鳴らせる者。
それぞれの想いを抱えながら、生徒たちは熱い一日を迎えようとしていた。
……この日が、私にとって忘れられない思い出になるとも知らずに。
私は足が速い(と言われたので)100m走に出る。
毎年、一番人気なのは借り物競争だ。お題に「好きな人」とか「伝えたいことがある人」の場合、カップルが成立するのだ。
玲央くんは借り物競争にでるみたい……。足速いし、優勝できそう……。
今年は「赤組」だ。赤い炎のように燃えて、頑張る!!
いよいよ始まった、体育祭!
初めの種目は100m走なので、私はスタンバイしていた。3番目に走る。
「いちについて、よーい……ドン!」
ついにきた。次は私の番。一応だけど……、100m走、12秒なんだ。
「いちについて、よーい……ドン!」
私はその声が聞こえた瞬間、走り出した。横には3人ほどいる。
でも、ここで差をつけて……抜かす!!
と思った瞬間、靴の紐がほどけ、その紐のせいで転んでしまった。
走っていた人たちはもう、みんなゴール目前。
なんで、こうなるの……。
私は立ち上がり、走ろうとした。
だけど、無理だった。今日の朝から、貧血気味でもあったので、頭がふらふらしてきた。
もう、倒れる……。
土に叩きつけられると思った。けれど、体を受け止めたのは予想外に柔らかな感触だった。
「大丈夫?」
かすかに聞こえた優しい声……。
でも、私は意識が遠くなっていて、よく分からなかった。
周りからは「キャー!!!!!」というものすごい声が聞こえた気がする……。
そこで私の意識はプツっと途切れてしまった。
そして、目を開けた時は屋内だった。
ここは、保健室……???
私はベットから体を起こした。隣に居たのは……。
「大丈夫なの?」
「え……? 川口くん⁉」
「あ、うん……。今、障害物競走終わったところ。俺、借り物競争出るんだけど、一緒に行かね? 体が大丈夫なら」
「あ、うん。もう、大丈夫! あとは応援するだけだし。テントの中だし……。行く!!」
「あ……じゃあ、行こう……」
『ただいまから、借り物競争をはじめます。出場者は入場門に来てください。繰り返します……』
「あ、急がないと……」
私は走り出した。川口くんも一緒に走り出した。
「あれ、大丈夫だったの……? べ、別に心配してるわけじゃない……けど」
心配してくれてるんだね……。きっと……。
「ちょっとだけだけど、貧血だから、大丈夫。心配してくれてありがとう!!」
「心配ありがとう!!」
「だから、別に心配……してねーし!!!」
「ははぁ……。そう? ごめんね」
……と会話してるうちに入場門に着いた。
「じゃあ、ファイト!」
「あ、そう。また!」
川口くんって、ツンデレ? 素直になれないよね……。本当に……。
『さぁ、借り物競争がはじます! お題は何を引くんでしょうか?』
「いちについて、よーい……ドン!」
私はすぐに分かった。
川口くんがどこにいるか。私は川口くんから目を離せなくなってしまった。川口くんのあの、優しさ。あの優しい声。優しい仕草。
全部全部、川口くんのいいところだよ……。
川口くんは今、お題を引きいや~な顔をしてる。お、これは変なお題だったのかな?
川口くんは二年三組のテントに向かって走ってきた。
「愛原、ちょっと来て!」
愛原さんが呼ばれてる……誰だ~?
周りを見渡すと、みんなが私を見ている。
あ、ああああああああああああ、愛原って私だったーーーーー!!!!!!
私は川口くんの元に走っていく。
「愛原さん、大丈夫? 走れる?」
「あ、走れるよ!……って、きゃ!」
なんと、川口くんが私をお姫様抱っこしたのだ。彼なりの優しさ……なのかな?
周りはものすごく興奮している様子。でも、わたしにはそんな声が聞こえなかった。
だって……。今は、川口くんから目が離せないんだもん……。
見事、川口くんは一位でゴールした。
川口くんは私を降ろしてくれた。
「あ、ありがとう。でも、大丈夫だった? 私、重いでしょう……?」
「軽かったし……。って、別にお世辞じゃないからな? マジだから!」
「軽かった? 私重いと思うんだけど。お世辞、ありがとう!」
「お世辞だと思うなら、お世辞って捉えて!」
でも、結局お題って何だったんだろう……。
ひとりひとりお題発表の時間だ。
「それじゃあ、一人ずつお題を発表してもらいます!」
先生の声に、運動場がざわついた。
発表は最下位から。
「第十位、田中!」
田中くんが前に出て、お題を読み上げる。
「『初恋の人』です」
周りから「おおー!」と声が上がった。
その後も……。
「第九位、『家族』」
「第八位、『親友』」
「第七位、『後悔したこと』」
次々と発表が進んでいく。
みんなのお題を聞きながら、私はそっと川口くんの方を見た。
いつもと変わらない表情。何を考えているのか、全然分からない。
そして、ついに――。
「第一位、川口!」
教室が少し静かになる。
川口くんは席を立つと、ゆっくりと前へ出た。紙を見つめる。
数秒の沈黙。そして、静かな声で読み上げた。
「……『嫌いな人』」
その瞬間、周りの空気が変わった。
笑っていたクラスメイトたちも、思わず顔を見合わせる。
『初恋』でも、『好きな人』でもない。
『嫌いな人』。
川口くんは何も言わず……。
だけど私は、なぜか目を離せなかった。
彼は、一体なんで、イヤな顔してるんだろう……。
その後、大縄跳び・綱引き・クラス対抗リレーが一瞬のように終わった。
結果は赤組の大勝利だった。
勝ててよかった……。
だけど、わたしの心ではただ一人……。
川口くんのことが忘れられない……。川口くんのことを考えてしまう……。
変なの、私……。
まさか、この日が一生の思い出となるとはまだ知る余地もなかった。


