『学校のクール王子と365日ひとつ屋根の下!? 〜家では溺愛狼でした〜』

「え……? うそ、でしょ……?」

放課後の誰もいない教室。

夕方のオレンジ色の光が差し込む中、私はスマホを握りしめたまま固まっていた。

画面に表示されているのは、お母さんからのメッセージ。

『急にパパの海外赴任が決まっちゃって、今日から2人でアメリカに行ってきます!葵の荷物は、知り合いの【九条家】に送っておいたからね! 1年間よろしくおねがいしまーす!』

「よろしくおねがいしまーす、じゃないよぉぉお!!」思わず叫んでしまった。

親が突然いなくなるだけでも大パニックなのに、今日から知らない人の家に居候!?

頭が真っ白になりながら、私は重い足取りで、お母さんから指定された住所へと向かった。

高級な住宅街の中に立つ、大きくておしゃべりな一軒家。

表札には、確かに『九条』と書かれている。

(うぅ……緊張して心臓が口から出そう……)

ギュッとローファーのつま先に力を入れて、私はインターホンを押した。

ピンポーン――。静かな家の中に、チャイムの音が響く。

数秒後、ガチャリと鍵が開く音がして、ゆっくりとドアが開いた。

「は、はじめまして! 今日からお世話になる、葵で――」

頭を下げながら挨拶をして、顔を上げた瞬間。

私の言葉は、完全に止まった。

「……え?」そこに立っていたのは、背が高くて、モデルみたいに綺麗な顔立ちの男の子。

サラサラの黒髪に、吸い込まれそうなほどクールな、切れ長の瞳。

着崩したワイシャツの胸元が、なんだか少し大人っぽい。

それは、私のクラスの、いや、学校中の女子が憧れる『孤高の王子様』だった。

「……零くん……?」学校では女子からの告白を毎日冷たく断っている、あの雲の上の存在の九条零くん。

席が遠い私なんて、一度も目を合わせたことすらなかったはずの彼が、なぜか目の前にいる。

零くんは、パチクリと目を丸くしている私を、じっと見下ろした。

そして、フッと意地悪そうに口元を緩めた。

「ふーん。お前が、今日からうちに来る居候?」

「え、あ、はいっ……!」あまりのイケメンオーラに圧倒されて、一歩後ろに下がる私。

すると零くんは、私の腕をきゅっと掴んで、強引に家の、中へと引き寄せた。

バタンッ。

勢いよく玄関のドアが閉まり、鍵がかけられる。

狭い玄関で、零くんの体温と、甘いシャンプーの香りがフワッと私を包み込んだ。

学校での冷たい雰囲気とは違って、なんだかすごく、距離が近い。

零くんは私の耳元に顔を近づけると、低くて、少し意地悪な声で囁いた。

「学校では、絶対に他人のフリ。誰にもバレたらめんどくさいから」

「う、うん……! もちろん!」

私はコクコクと激しく首を縦に振った。

けれど、零くんの言葉はそこで終わらなかった。

私の顎を細い指先でくいっと持ち上げると、まっすぐに私の目を見つめてくる。

「……でもさ」零くんの綺麗な瞳が、少しだけ熱っぽく揺れた。

「この家の中に入ったら、鍵はかかってんだから。……俺の隣にいろよ?」

「ひゃいっ……!?」