口の悪い瀬尾くんは、私だけを溺愛する

「楓希、昨日は律と向き合ってくれてありがとう」

放課後の何度も訪れた空き教室。

「気にするな。それより、漫画の主人公すごく明るくなったな。本当の自分を取り戻して」

楓希は私の漫画を描いているノートから、顔を上げるなりそう言った。

「そうかな?私は自分の気持ちをそのまま乗せただけなのに」

私は本当にありのままの自分について書いただけ。

自分でもわかる変化といえば、相手の人物が楓希に似たこと。

「それでいいんだ。麻緒自身も前より生き生きとするようになったしな」

楓希は、安心したような笑みだった。

「楓希のおかげだよ。本当にありがとう」

私がもし、楓希と関わってなかったら今頃どうしてたんたろう。

何気ない日常を、恋を知らずに過ごしていたのかな。

「麻緒、こちらこそだ。俺は、麻緒と出会えて望んでいたことが叶った」

「で、でも、これで約束は果たせたことになるよね?だけど、まだ楓希と一緒がいい」

私は楓希との約束を思い出して、涙があふれてきた。

それは、最初の怯えた感情ではない。

好きな人と別れたくない、悲しみだ。

「約束は果たせたな。でも、俺はこれで終わりと言ったか?」

言われてみれば、その通りだ。

私、なぜ一人で泣いてるんだろう。

「そうだね。これからもずっと一緒だね」

「当たり前だ」

私と楓希、二人だけの放課後はずっと終わらない。

素の自分で向き合える、新しい日常だ。