口の悪い瀬尾くんは、私だけを溺愛する

「あっ、ねえちゃん。って、誰?彼氏?」

地下鉄のホームを出ると、弟の律と遭遇した。

最近は、楓希と一緒に下校することが多くなり、今も隣にいる。

「た、ただのクラスメイトだよ」

楓希とは、距離が縮まって両想いではあるけど、正式にはってことではないはず。

そして、律にはあまり探られたくなかった。

「麻緒の弟?おまえ、麻緒に何を言ったんだよ?」

「ふ、楓希。一回、落ち着いて」

楓希の声が荒くなっていく。

私のために怒ってくれるのは嬉しいけど、こんなに人通りの多い場所では。

◇◇◇

「麻緒は待ってな」

近くの小さな公園に移動してきた。

私はベンチに座って、二人のことを見ていることにした。

(楓希視点)

「おまえさ、麻緒の口調や趣味のことを馬鹿にしたんだろ?麻緒から、聞いてるからな」

俺は絶対、律のことを許せない。

初めて好きになった人のことを傷つけるやつは。

「だ、だって、思ったことを言っただけ……」

律は抵抗しようとするが、声が震えている。

「麻緒がどれだけ傷ついたか、わからねえかよ。おまえのせいで、素の自分を失ったんだ」

◇◇◇

俺は、麻緒と初めて話した時、自分と重なって見えた。

俺は中学の頃、ずっと独りだった。

周りから恐れられていた。

つまり、人付き合いが苦手だった。

家に帰っても両親は必要最低限のことしかしてくれない。

そして、俺は、寂しがり屋になってしまった。

だから、俺のことを一番に見てくれる人が欲しかった。

◇◇◇

「ご、ごめんなさい。そこまで、傷つけていたなんて知らなくて」

律は泣きながら、俺に謝ってきた。

人の涙に弱い俺は、自分のせいだとしても、いつもの自分を保てなくなる。

「わかった。俺じゃなくて、麻緒に謝りなよ」

(麻緒視点)

「ねえちゃん。たくさんひどいこと言って、ごめんなさい」

楓希と話していた律は戻ってくるなり、そう言ってきた。

律が面と向かって謝ってくれたのは、初めてかもしれない。

「律、わかればいいの。でも、物事を言う時は相手のことを考えてね」

最初は何があっても許せなかったかもしれない。

でも、楓希と話し合ってくれて、理解してくれたのならそれでいいのかな。