口の悪い瀬尾くんは、私だけを溺愛する

「さっきのあれ、やばかったよね」

「う、うん。そうだね」

賑やかな休み時間の教室。

友達と他愛のない会話をしていても上の空。

私の視界は瀬尾くんを捉え続けている。

昨日、相合傘をしたことがまだ脳裏に焼き付いている。

「また放課後な」

瀬尾くんは急に立ち上がって、私にしか聞こえないくらいの声で囁いて、教室を出ていった。

「ちょ、ちょっと麻緒。あの瀬尾くんとどういう関係なの?」

今の光景を見た友達が、興奮して、でも少し恐れながら訊ねてくる。

「た、大したことじゃないよ。たまたま当番で……」

咄嗟に嘘をついて、誤魔化した。

◇◇◇

「瀬尾くん、昼休みのあれはないよね?」

放課後のいつもの空き教室。

「悪かったって」

私が少し責めたように言うと、瀬尾くんはきまりが悪そうに微笑みながら言葉を返してきた。

瀬尾くんって、あんな顔するんだ。

そんなことを考えていると、私の鞄から何かが落ちた。

「こ、これ誰だよ?彼氏じゃねえよな?」

落ちたのは、中学生の弟、律と私が写っている写真。

「な、そんなわけないでしょ。弟の律だよ」

思ったより、語気強い口調になり、自分でも驚く。

「び、びっくりさせるなよ。これが例の弟か」

瀬尾くんは落ち着きがなくて、薄っすら顔が赤く染まっているように見えた。

「ご、ごめん」

「でもさ、あれが素の白石だろ?俺はそっちのほうが好きだけどな」

「えっ、えっ」

急に好きとか言われて、理解が追いつかない。

告白じゃないよね。

心臓の音が、耳元で響いているみたいに激しくなる。

「だ、だから……。俺は白石、麻緒のことが好きなんだよ。こんなこと二度も言わせるな」

瀬尾くんは俯きながら、今度はしっかりと想いを伝えてくれた。

「私も、好きだよ。楓希」

「ちょ、その呼び方……」

瀬尾くん、楓希はいつもの雰囲気は全くなくて、恋する男子そのものだった。

「お互い様でしょ」

私は照れ隠しで、素の口調で話してしまう。

「今度、麻緒の弟に会わせてくれないか?麻緒のこと悪く言うやつな許せないからな」