「リゼ!!」
リゼの姿を見つけたエリシアは、駆け寄るようにリゼを強く抱きしめた。
「リゼ、髪が……!それに、ひどい怪我を!」
涙を溜めるエリシアの頭を、リゼは優しく撫でた。
「邪魔だったから切っただけ!」
そう言ってなんでもないように笑ってみせるリゼの声は、いつも通り明るい。
ただ、その腕や肩に巻かれた包帯が痛々しかった。
いつもそうだ。
リゼはいつも無茶をする。
傷付いても、倒れても、それでも立ち上がる。
守られることを嫌い、いつだって誰よりも強くあろうとする。
「……いいかげんに、してくれよ。」
クロードは、エリシアと話をするリゼを少し離れた位置から見ていた。
その拳は、爪が食い込むほど強く握り締められていた。
(まただ。)
リゼは、何も変わらない。
誰の心配も、届かないまま前へ出る。
そのたびに、自分の中の何かが削られていくのに。
リゼは、子供の頃から頑固で負けず嫌いだった。
公爵令嬢でありながら、近衛騎士になると言い出した日。
誰もが止めた。
「女の子なんだから」
「公爵家の令嬢が」
そんな声を、リゼは全部振り切った。
兄・ゼンに頼み込み、護衛隊の試験を受けた。
その頃からすでに、剣の腕は突出していた。
男たちの中でも、遅れを取らなかった。
その様子を見ていた団長が、その才能を気に入り隊に迎え入れたのが三年前。
リゼが十四歳の時。
クロードは十六歳だった。
その頃の彼は、騎士になる気などなかった。
ただ、リゼを放っておけなかった。
父が元団長だったこともあり、試験は簡単な実技だけで通った。
気づけば、同じ隊にいた。
そのときもリゼは、不満そうに睨んでいた。
「なんであんたがいるのよ」
そんな顔をしていた。
明るくて、まっすぐで、眩しいほど強い少女。
それでも身分は違う。
リゼは公爵家。
自分は伯爵家の次男。
近くにいることすら、本来は許されない距離だ。
それでも。
(守りたい)
その気持ちだけは、消えなかった。
けれど、それを口にしたことは一度もない。
ただ、そばにいられればそれでいいと思っていた。
――もっと強くならなければ。
リゼより強くなって。
彼女の前に立てる存在に。
その理由さえ、言葉にすることはなかった。
『お前がいない世界で――』
クロードの声を思い出しながらも、リゼはまだ知らない。
その言葉の重さを。
その意味を。


