エリシアと別れて訓練場に戻ると、まだクロードは戻っていなかった。
近くにいた騎士に、声をかける。
「クロードは?」
「総長に呼ばれて一緒に行ったきり戻ってないですね。」
「そう。」
午前中の訓練を終えても戻ってこなかったクロードを探して、リゼは城の庭を歩いていた。
そのとき--
「じゃあお前リゼ様に勝てるのか?」
「無理だろ。うちの団員でリゼ様より強いのは団長くらいだよ。」
休憩中の仲間の騎士のそんな会話が耳に入る。
ふふん、と得意げな気持ちになったのも束の間。
「おい、聞いたか?クロードに、次期副団長の話が来てるらしい。」
「さっき総長に呼ばれてたのはその話だったのか。」
クロードが次期副団長?
リゼの足が止まる。
--バン!
「兄様!」
扉を開けると、正面の机に座るゼンと、その前に立っているクロードの姿があった。
「リゼ。部屋に入る時はノックをしろと何度も言っているだろう。」
「……すみません。それより、本当なんですか?クロードが次期団長って。」
「もう広まってるのか。噂好きがいたもんだな。」
否定は、されなかった。
それだけで、充分だった。
--私の方が強いのに。
喉まで出かかった言葉を、リゼは飲み込む。
わかっている。
自分は女であることくらい。
どんなに強くなっても、それは変えられない。
「……リゼ。」
クロードが何か言おうとしたけれど、その続きを聞く前に背中を向けた。
「……クロード。おめでとう。」
強くなりたい。
ずっとそう思って頑張ってきた。
それなのに。
私は--認めてもらえないの……?
扉が閉まる音だけが、静かに響いた。
残された部屋で、ゼンがポツリと呟く。
「クロード、すまないな。」
何に対してなの謝罪なのか、クロードにはわからない。
「……いえ。」
「お前には、みんな期待している。お前ならできる。俺が保証する。」
尊敬するゼンに推薦され、こうして言葉をかけられる。
本来なら、誇らしいはずだった。
それなのに。
さっきのリゼの表情が、頭から離れない。
クロードは小さく、顔を歪めた。
ゼンもそれ以上、何も言わなかった。


