「お楽しみのところ申し訳ありませんが、俺の席返してもらえます?」
静が、いつの間にかそこに立っていた。さっきまで女子たちに囲まれていたはずなのに、抜けてきている。
「あぁ、ごめん。じゃあ、ふみちゃん俺の席で話さない?」
男の子が軽く笑いながら立ち上がった、その瞬間。
「……ふみちゃん?」
静の声が一段低くなる。空気が変わるのが分かるくらい、一瞬で温度が下がった気がした。
「ちょ、ちょっと静…」
私は慌てて止めようとするけど遅い。
ドンッ、とスクールバッグが机に叩きつけられて、静が男の子に一歩踏み込む。
…ま、まずい。
「お前が、気安く呼んでいい名前じゃない」
静の声は低くて、さっきまでの教室の空気が一気に重くなるのが分かった。
「は?どういうこと?」
男の子も負けてなくて、軽く笑いながら返す。その瞬間、静の目つきが変わって、あ、これまずい、っていう直感が全身を走る。
今にも胸ぐら掴みそうな距離感で、周りの女子たちも一斉に固まってる。
やっ、やめてーー!夢に見た私の高校生活が初日から台無しに…!



