たぶんこの人は、さっきからの一連の流れを全部見ていて、このサラリーマンが私の太ももに触れていたのも理解していて、その上で「処理」をしようとしているんだろう。
それ自体は、正しいと言えば正しいのかもしれない。
駅員さんに突き出すとか、会社に連絡するとか、そういう方向ならまだ分かる。
「静。名刺もらってなにしようとしてるわけ?」
でも、今の静の言葉は違った。
「こいつの会社潰そうかと」
その一言を聞いた瞬間、私の思考は完全に止まった。
え、潰す?会社?
心の中で何度も何度も警報が鳴る。
「そんなの許すわけないだろ!」
気づけば私は叫んでいた。
満員電車の中で、周りの視線が一瞬で集まるのがわかる。
でも止めないといけない、これ以上やらせちゃいけない。
「なんでですか?ふみさんの足触ってたんですよ?」
静は真顔のまま、まるで当然のことみたいに言う。
私の隣で腕を捻り上げられているサラリーマンは、完全に顔色を失っていて、青というより白に近い。
……だめだ、ほんとに。こいつとやっていける気がしない!!



