「俺も歳なんで、年々体が動かなくなってきまして。お嬢が高校生にあがると同時に、ボディーガードをやめることにしたんです」
私の中ではうまく意味にならなくて、ただ音だけがぐるぐると頭の中で反響していた。
やめる?ボディーガードを?臣さんが?
そんなの、今まで一度だって想像したこともなかった。
「(……うそ。ほんとに?)」
頭が追いつかない私をよそに、臣さんはまるで当然の流れみたいに隣に座る彼へ視線を向けて、「挨拶しろ」と短く促した。
その声に押されるように、彼がゆっくりとこちらに顔を向ける。
「鳳条静です。よろしくお願いします」
その瞬間、胸の奥が不意に跳ねた。
にこりと浮かべられた人当たりのいい笑顔は、初対面なのに妙に距離を詰めてくるみたいで、なのにどこか掴みどころがなくて怖いくらい落ち着いている。
それなのに、耳の奥に残るような低い声色だけが妙に鮮明で、さっきまで動揺でいっぱいだったはずの心が、一瞬だけ別の意味でざわついた。



