でもそれでも私にはおじいちゃんがいた。優一郎さんがいた。組のみんながいた。
血の繋がりなんてなくても、みんな私を大事にしてくれていた。
帰れば名前を呼んでくれる人がいる。頭を撫でてくれる人がいる。笑いかけてくれる人がいる。
でも静には、それすらなかったんだ。
そう思った瞬間、不思議と自分の涙なんてどうでもよくなった。
寂しいのは私だけじゃなかった。苦しいのは私だけじゃなかった。静も同じだった。
いや、もしかしたら私よりずっと――。
気づけば私は手を伸ばしていた。静の黒い髪に触れる。
静はびくりと肩を揺らしたけれど、私はそのまま優しく頭を撫でた。
「だいじょうぶ」
自分でも不思議だった。さっきまで泣いていたくせに。誰かに大丈夫だと言ってほしかったくせに。
なのに今は、静に言わなきゃと思った。
「わたしがいるからね」
そう言うと、静は目を見開いた。それから少しだけ俯く。耳が赤くなって、頬もほんのり赤くなっている。
私はそんな静を見て、初めて笑った。静も少しだけ口元を緩めた。
その笑顔はほんの一瞬だったけれど、私には宝物みたいに見えた。



