もしお母さんが生きていたら。もし私がもっといい子だったら。
そんなことを考えてしまう自分が嫌だった。
違う。そんなわけない。分かっているのに、不安になるとどうしても考えてしまう。
広い屋敷の中を走り回った。
廊下を曲がってもいない。庭にもいない。どこにも静の姿が見当たらない。
無駄に広い家。いつもは安心できる場所だった。帰れば誰かがいてくれる場所だった。
でも今は違った。
静かな廊下がやけに冷たく感じる。誰もいない空間が怖かった。
私はとうとう足を止め、その場にしゃがみ込み、ぎゅっと膝を抱える。
すると我慢していたものが一気に溢れた。ぽろぽろと涙が落ちる。
「……だいじょうぶ。だいじょうぶ」
小さな声で呟く。何度も何度も。
だいじょうぶ。友達がいなくても大丈夫。お父さんに会えなくても大丈夫。一人でも平気。寂しくなんかない。
………でも全然そんなことなかった。



