物心ついた頃から、私の周りには組員たちがいた。
庭で遊べば誰かが見守り、外出すればボディーガードが付き、帰宅すれば「お帰りなさい、お嬢」と迎えられる。
私にとっては当たり前の日常だったけれど、普通の人から見れば少し変わった環境なのかもしれない。
敷地内を歩けば、年上の組員たちが立ち止まって頭を下げる。
幹部たちですら私を「お嬢」と呼ぶ。
小さい頃から可愛がられてきたせいで、組の人たちは家族のような存在だった。
もちろん、私は組の仕事には関わっていない。
会議室の向こうで何が話されているのかも知らないし、裏社会の事情だって詳しくはない。
だけど、鳳条組の人間として生まれた以上、私はずっとこの世界の中で生きてきた。
広い屋敷も、厳重な警備も、組員たちの忠誠も。
すべてが私の日常だった。
そんな私の日常が、今日をもって変わろうとしている。



