そっと顔を上げる。ほんの少しだけ。様子を見るように。すると、すぐに視線がぶつかった。
「どうしました?」
低く落ち着いた声。昔よりずっと大人びた声が耳に届く。
「……っ、なにも」
私は反射的に目を逸らした。
だめだ。目が合うだけで心臓が変になる。
ドクン、ドクンと大きな音を立て始めた胸を押さえたくなる。
「ふみさん、変わりましたね」
「へ?」
思わず顔を上げると、静は私を見つめていた。そしてふっと表情を緩める。
その優しい眼差しを見た瞬間、胸の奥がきゅっと締め付けられた。
ああ、この顔。知ってる。私の記憶の中にもある。
小さい頃の静は無表情で、ぶっきらぼうで、何を考えているのか分からない子だった。
でも、たまにだけ見せる柔らかい表情があった。
今の顔はその頃と同じだった。変わったはずなのに、変わっていない部分も確かにある。そのことが少しだけ嬉しかった。



