「先輩、今日何の日か知ってますか?」
「高橋の呼ぶ“先輩”って、いつも語尾にハート付いてるよな」
「愛を込めて呼んでますから……って、そうじゃなくて」
そう返すと、先輩は少しだけ笑って、「待ってるから、靴履き替えてくれば?」と言った。
その一言に甘えて、私は急いで自分の下駄箱へ向かう。
待っててくれるんだ……うれしい。
そういう何気ない優しさが、本当にすき。
できるだけ急いで履き替えて、3年生の下駄箱へ戻る。
廊下のほうをぼんやり眺めて待っている先輩の横顔にも、また胸がきゅんとなる。
駆け寄る私に気づいた先輩は、少しだけ口角を上げて私を見下ろした。
その細められたアーモンドアイと目が合った瞬間、心臓がまたひとつ大きく跳ねたりして。
「それで?今日は何の日かって?」
「そうです。覚えてますか?」
そう言いながら、先輩と並んで階段を上がる。



