「せーんぱい。おはようございますっ」
「うん、おはよ」
朝の昇降口。
たまたま大好きな背中を見つけた私は、嬉しくなって少しだけ速足でその背中を追いかけた。
ほとんどぺちゃんこなスクバに、綺麗にアイロンのかかったシャツ。
無造作にセットされた黒髪。
大きな右手をポケットに突っ込んだまま、左手で内履きを雑に床へ置いて、それからゆっくり私を見る。
「先輩。今日も、眠そうですね」
そう言うと、先輩は片眉をほんの少しだけ寄せて、我慢できなかったみたいにふわぁっとあくびをした。
「はは。言われたらあくび出ますよね」
なんて笑いながら言った私も、つられるように大きなあくび。
……あ、先輩の前でだらしないところ見せちゃった。
恥ずかしくなって慌てて口元を手で隠すと、クスッと優しく笑う先輩が目に映る。
少しだけ目にかかる前髪も、その隙間から覗く切れ長のアーモンドみたいな瞳も。
……全部、全部、すき。



