ちぃちゃんの絆創膏

 訪問看護師さんのおかげで、ODすることなく過ごしていたら、ちぃちゃんが、自分の家から来た。
 ちぃちゃんの顔を見て、嫌な予感がした。
 嫌な予感ほど当たるもので、当たってしまった。
 「あたし、直腸癌になった。」
 言われたこっちは、頭真っ白…。
 「(なんで、ちぃちゃんが…?)
(お腹痛かったのがそうだった?)
(血便がそうだった?)」
 思えば思うほど、どれが悪かったのか、どれもが悪かったのか分からなかった。
 「いやだ。
ちぃちゃんが居なくなるなんていやだ。」
「でも、治療しないことに決めたの。」
「なんで?」
「お母さんの時、管だらけで亡くなったの見てるから、治療だけは嫌。」
「そんな…。
そんなのしたら、もっと寿命が…。」
「分かってる。
でも、治療せずに、好きなことして死にたいの。
だから、病院にも行かない。」
「ダメだよ。
病院には行って。」
「ううん。
行かない。」
「助かるかも知れないのに?」
「助かるなんて思ってない。
血便が出た時、病院に行っていたら、治ったかも知れないけど、血便が出だしたの、最近じゃないし。
もう、遅いと思うよ。」
「医学は進歩してるから。
治るかもじゃん。」
「いいの。
迷惑かけてまで、生きていたくない。」
「じゃあ、ちぃちゃんは、ちぃちゃんのお母さんの時、迷惑って思ってたの?」
「ううん。
迷惑じゃないよ。」
「だったら…。」
「あたしは、お母さんと違うから。
迷惑って思われる…。」
「そんなことない!」
「あるの。」
 あたしは、チラシを1枚ちぃちゃんに渡した。
 「何これ?」
「いいから。
行こう。」
 詳細を何も言わず、ちぃちゃんを連れ出した。
 行き先は、チラシのとこ。
 チラシには、こう書いてある。
 癌サイバーのやっている喫茶店。
 ちぃちゃんを治療する気にするのは、ここしかないと思った。
 喫茶店に入ると、マスターが迎えてくれた。
 「レモネード2つ。」
「はい。」
 マスターは、すぐに作ってくれた。
 一口飲んで、ちぃちゃんから、こぼれ落ちたのは、美味しい…。だった。
 それから、時間があったので、マスターが話してくれた。
 実は、事前にマスターのとこに行って相談していたのだ。
 マスターに、
 「あたしは健康だから、痛みとか分かりません。
なんて声かけて、ここに連れてくればいいかも、分かりません。
でも、痛みを知ってる人だったら、共感できるかと思って…。」
「じゃあ、何も言わず、このチラシを渡しなさい。」
 そう言って渡されたのが、さっき、ちぃちゃんに渡したチラシ。
 ちぃちゃんは、真剣にマスターの話しを聞いていた。
 時折、ちぃちゃんは、管まみれは嫌なんです。とか不安なんです。と言っていた。
 マスターは、時折返ってくる返答に答えてくれた。
 「話しを聞いて、今は、治療したいと思ってるでしょ?」
「はい。」
「医者っていうのは、コミニケーション不足でね。
自分が嫌なものは、嫌です!って言わないと、あー、いいんだ!って、治療始めちゃうから、管まみれは嫌なんです!って言ってごらん。
また違う方法が生まれてくるから。」
「はい。
治療してみようと思います。」
 ちぃちゃんが考えを変えてくれた。
 ちぃちゃんは治療を始めたけど、やっぱり、遅かったのと体力がないので、抗癌剤は1回しか出来なかった。
 体力作りをしようにも、ちぃちゃんはくる病であまり歩けなくて、体力が作れない。
 どこにも転移しないことを願ったけど、甲状腺の数値が悪すぎて、甲状腺癌になってしまった。
 ただでさえ、薬を飲み込むのが大変なちぃちゃん。
 余計に、飲み込めなくなった。
 「オブラート使う?」
「あれ嫌い。」
「じゃあ、お薬飲めたよ?」
「子どものじゃん!」
「大人用あるよ?」
「でも、ゼリーでしょ?」
「うん。」
「ゼリー食べれない…。」
「じゃあ、どうする?」
「無理矢理飲む。」
 苦しそうに飲む、ちぃちゃん…。
 「(痛いんだろうな…。)
(苦しいんだろうな…。)」
 1回で飲み込めない時もでてきた。
 ご飯も、柔らかいのじゃないと食べれなくなった。
 ちぃちゃんの嫌いなお粥が主食…。
 ちぃちゃんにとって、苦痛でしかない…。
 ちぃちゃんが、ご飯と戦ってる時に、あたしの方は、ヘルパーさんにも入ってもらうことになった。
 ADHDで、片付けができないので、ありがたかった。
 ちぃちゃんも訪問看護師さんが、いつ入るか分かった。
 ヘルパーさんも自分で見つけて、入ってもらうことにした。
 ちぃちゃんは、お風呂介助もしてもらうことになった。
 あたしが、人並みの暮らしができるようになってから、精神の方は落ち着いていた。
 ちぃちゃんは、血尿と血便が酷く、一度泊まりに来た時、余りの痛さに、苦悶の顔をして、あたしを起こした。
 朝には治ったらしいけど、すごく痛そうだった。
 この痛みも、あたしには分からない…。
 ただ、ちぃちゃんの顔から察して、凄い痛みなんだと思った。
 「救急車呼ぶ?」
「いい。
お金かかるし。
じっとしていれば、大丈夫だから。」
「分かった。
何かあったら、すぐに来て下さい。って言われたけど?」
「大丈夫よ。
薬も飲むから。」
 そう言って、薬を飲んで、ゆっくりしていた。
 ちぃちゃんが、家に帰って数日が経った。
 ここのところ、ずっと、落ち込んだ感じのちぃちゃん。
 何もなければいい。と思っていた矢先、ちぃちゃんODして、救急車で運ばれた。
 あたしに連絡してきたのは長女だった。
 長女は、ちぃちゃんがODして倒れて、自分で救急車を呼んだこと、今、胃の洗浄をしたこと、家族全員が揃ってること、長女は仕事に行かなければならないことを、教えてくれた。
 とりあえず、長女が、仕事行くのに、母大家のことが心配で、運転に集中できなかったら大変だと思ったのと、雨だったので、気を付けて、ゆっくり運転していくことを伝えた。
 今度は、長男に代わって、長男とLINEした。
 点滴がもう終わるから、終わったら、ちぃちゃんの弟が、母親の自宅に送って行く。と教えてくれた。
 ちぃちゃんが、自宅に帰ったのを知って、ちぃちゃんに電話した。
 電話で、ちぃちゃんを怒った。
 心配してることも伝えた。
 次の日は、大人しくしていた、ちぃちゃん。
 でも、訪問看護師さんには、薬が足りないから、ODしたことはバレるということも伝えた。
 次の日。
 ちぃちゃんは、まだ、体調が万全じゃなかった。
 しかも、また、ODしようとしていた。
 放って置けなかったから、迎えに行って、数日泊まるようにした。