ちぃちゃんの絆創膏

 今から15年前、よく行くBARで、あたしと同じく1人で飲みにくるお客さんがいた。
 あたしは、話しかけたくて、マスターにお願いをした。
 初めマスターは誰のことか分からなかったが、ジェスチャーも交え、必死に訴えると分かってくれた。
 マスターにいつ来るのか、何度も聞いていたら、うるさかったんだろう。
 来る月を教えてくれた。
 その月が来ても、彼女は来なくて、いつ?を連発したら、これまたうるさかったんであろう。
 来る日を教えてもらった。
 教えてもらった当日。
 あたしは心待ちにしていた。
 マスターは、約束通り、彼女がきた時、教えてくれた。
 あまりに嬉しくて、彼女に話しかけていいか、マスターに聞いた。
 「話しかけるのはダメ!」
「なんで?!
じゃあ何故教えた?」
「教えてって言ったのは、遥ちゃんでしょ?
だから、教えてあげたじゃん。
話しかけるのは別。」
 まさかの答えだった。
 「じゃあ、今すぐ、あたしに従業員着けるか、話しかけていいかを選んで。」
 従業員の少なさは、把握済み。
 答えは、話しかけてもいい。しかない。
 その状況での2択…。
 マスターの答えは…。
 話しかけていい。だった。
 当然の答え。
 あたしは、堂々と話しかけた。
 彼女は、話しかけられたことに驚いていた。
 それもそう。
 話しかけることを禁止にされていたから。
 「あたし、遥。
よろしくね。」
「え…え…。」
「大丈夫。
話しかけるの許可もらったから。」
「そうなの?!
あたしは…ちぃちゃんって呼んで。」
「分かった。」
 話しを聞けば、ちぃちゃんは結婚してて、子どもが4人居ることが分かった。
 ちぃちゃんも、子ども達が寝てから、親に任せて、飲みにきていたらしい。
 あたしも同じだったので、急速に仲良くなれた。
 更に、ちぃちゃんの3番目の子があたしの子どもと同じ歳で、一緒にご飯食べに行く約束もした。
 「子ども達を会わせる前に、一緒にご飯でもどうかな?」
 ちぃちゃんに、誘われた。
 あたし達は、次の日に、ご飯行くことにした。
 この頃は、まだ、コロナがなかった時だったので、24時間営業のお店が沢山あった。
 あたし達は、ガストに行った。
 久しぶりに、友達とご飯ということで、あたしの胸は躍った。
 あたし達の話しの内容は、BARのことだった。
 ちぃちゃんが、マスターと付き合っていることを知った。
 あたしは、従業員に片想いしてることを話した。
 2人で、話しに盛り上がっていたら、ちぃちゃんはマスターから。
 あたしは従業員から電話があった。
 電話が終わると、2人でため息をついた…。
 「あたし、BARに行かないと…。」
「ちぃちゃんも?
あたしもなんだけど…。」
 再び、ため息をついた。
 仕方なく、BARに向かった。
 一緒に入ると、一緒にいたことがバレるので、時間差で入ることにした。
 最初に入ったのは、あたし。
 入った途端、従業員の顔つきが変わった。
 「(あ、怒ってる…。)」
「なんで、こんなに遅いんな?」
「子ども寝かせてたから…。」
「ふぅーん…。
ほんとかよ?」
「うん。
ホント。」
「ふぅーん…。」
「何も悪いことしてないんだけど…。」
「まぁええわ。
ミルクティーやろ?」
「うん。」
 あたしが、ミルクティーを待っていると、ちぃちゃんが来た。
 ちぃちゃんは、来るのが遅かったことを、マスターに指摘され、ケンカを始めた。
 どっちも引かないので、ケンカはヒートアップ。
 マスターと付き合ってること、内緒と言っても、2人の関係を見たら、一目でバレバレだった。
 毎日ケンカするちぃちゃん。
 ホント、仲良いのは365日中5日だけ…。
 こっちは、言い返せば、何倍にもなって返ってくるのが、めんどくて、何も言わず我慢した。
 我慢したと言うより、不満を溜めていた。
 ここのBAR人気店ということもあり、他のお客さんの視線が痛かった。
 彼女なら、こんな視線もなんてことないんだろうけど、彼女じゃないから余計に突き刺さった。
 この日から、ちぃちゃんとご飯食べて、BARに行くのが日課になった。
 そんな、ある日、事件は起こった。
 この日も、ちぃちゃんとガストに行っていた。
 食事が終わり、会計を済ませようとした時、ちぃちゃんが、お金ない。発言をした。
 あたしは焦った。
 ちぃちゃんには、子どもが4人居る…。
 このままだと、警察沙汰…。
 そう思ったら、お金を貸すしかなかった。
 この日から、ちぃちゃんに、お金をちょくちょく貸すようになった。
 彼らが、社員旅行に行ってる時、あたしとちぃちゃんは、自由を手に入れた気分だった。
 その為、我慢していた、ホストクラブの新規巡りをすることにした。
 ホストクラブは詳しかったから、あたしの知ってるとこに行くことにし、初めに行ったのは、ユキのとこだった。
 久しぶりに話したけど、全く変わってなかった。
 ユキは、蛇を何匹か飼っていて、その自慢を聞かされ、海外旅行に行く時、ビニール袋に財布とパスポートとスマホを入れて行った。と聞かされた。
 そういうとこ、一切変わってなくて、懐かしかった。
 ユキのお店は変わっていて、1時間に1回テキーラのサービスがあった。
 あたしは、そこで初めて、テキーラローズを飲んだ。
 テキーラローズの美味しさは、ユキのお店を出てからも忘れられなかった。
 次の日。
 ゆっくりと寝ようとした時、授業員からLINEが来た。
 昨日は、これとこれとこれやったよ。みたいに、写真で報告してきた。
 楽しそうでなにより。と思って寝た。
 寝ていると、姪っ子が絵を持ってきて、あたしの手に握らせて、部屋を出ていった。
 何だ?と思って、見てみると、姪っ子とあたしが、虹と共に描かれていた。
 こう言うのって、母親に書くんじゃないの?と思った。
 しかも、面倒見ているのあたしの母。
 母でもなく、ママでもなく、何故かあたしだった。
 可愛がった記憶はない。
 この頃、鬱がひどくて、赤ちゃんの鳴き声が無理だったから、姪っ子のことは可愛がってなかった。
 だから、懐かれると思ってなかった。
 夕方、起きてみると、また、何かを握らされていた。
 今度は、絵じゃなく文字。
 姪っ子の名前が書かれていた。
 字が書けるようになったんだ…。と思った。
 リビングに行くと、姪っ子が、ニコニコしながら、文字を書いていた。
 その様子を見ていた母…。
 「なんで、何か出来たらあんたのとこに持っていく!
どう言うこと?
どうやって手懐けた?!」
「何もしてない。
起きたら、絵と文字が握らされていた…。」
「よく面倒見てるの私なのに…。
悔しい!」
「そう言われても…。」
 夜になり、あたしは、出かける準備を始めた。
 この日、行ったのは、シュンくんのとこ。
 シュンくんのとこで出会ったのが、ジョジョだった。
 あたしはジョジョを指名して、ちぃちゃんはミズホを指名した。
 彼らが帰ってくる1日前…。
 いきなり、LINEが鳴った。
 何だろう…。と思って開いたら、従業員からだった。
 「おい!
無視か?
他店行ったな?
1つだけ言うことを聞け!
ブロックするわ。」
「1つだけのお願いがブロック?」
 返信はなかった。
 バレるはずがないと思ったのに、バレたことに驚いた。
 何故、バレた?頭の中、これしかなかった。
 ちぃちゃんの方もバレたらしく、マスターに怒られたらしい。
 旅行から帰ってきた、BARのみんな。
 勿論、あたしとちぃちゃんは、BARに呼ばれた。
 そして、別々に座らされ、説教された。
 あたしは、何も言い返さなかった。
 行ったことは事実だし。
 何言っても、倍返しされるだけだしと、また、溜めた。
 この日から、また、自由がなくなった。
 従業員は、ブロックする。と言ったのに、してなかった。
 仕事始めに、きっちり連絡が来た。
 ブロック削除するんじゃなかったんかーい!心の中で叫んだ。
 BARに行ったら、不機嫌そうな顔の従業員…。
 これって、呼ぶ意味あるの?と聞きたかった。
 でも、喧嘩になるし、喧嘩するの怠いしで止めた。
 従業員は、反省していると思って、許してくれたけど、全然、反省してない。
 まず、ホストクラブの新規料金は、1000円がほとんど。
 BARに行けば、その10倍はかかる。
 どっちが安い?って話。
 それに、ホスト行ってはいけないって法律もない。
 好きに行って何が悪い?
 あたしのお金は、あたしのもの。
 だから、反省しなかった。
 ちぃちゃんは、マスターと喧嘩していた。
 旅行の前にも喧嘩して、帰ってきてからも喧嘩…。
 ホント、よく喧嘩する…。