ふたつの時を、重ねていく【『ふたつの弧が、重なるとき』番外編/定期更新中】

 福島から帰ってきて、一瞬だけ自宅に寄りすぐに向かったバイトを終えた。

 店舗の裏、従業員用出口から飛び出す。
 遅番だったので、外はもう真っ暗だ。

「……祥ちゃんっ」

 私を迎えに来てくれるときの定位置――街灯の下にいる、彼のもとへと駆け寄った。

「……お疲れ」

 そっと目尻を下げて微笑む彼の手を、思わずギュッと握る。

 そのまま手を繋ぎ、並んで歩き出した。
 今日はこのあと、私の家で一緒に過ごそうと約束しているのだ。


 一昨日。地元である福島の小さな公園で、お互いの気持ちを打ち明け、抱き合い、ようやく仲直りすることができた。

 東京に戻り、以前と変わらない……いや、それ以上に優しい彼の顔を見られて、それだけで胸がいっぱいになる。


「最近ね、休憩のときアイスコーヒーを飲んでみてるんだけど、だんだん美味しく感じるようになってきたんだ。それでね……」

 会えなかった時間の分、話したいことがたくさんあって、とめどなく喋り続けてしまう。
 福島で会ったときは、私があのあと家族で出かける予定があったし、祥ちゃんも日帰りで来ていてバタバタしていたから、思う存分話すことはできなかったのだ。

 けれど。
 止まらない口とは裏腹に、心ここにあらずな自分もいた。

(早く家に着いて、思いきり抱きついて、甘えたいな……)

 そんなことばかりが頭をよぎり、ひどく気が散ってしまう。

 それに、なんだか祥ちゃんも――私の話の一つひとつに、ずっと目を見ながら「うん」と穏やかに頷いてはくれるものの、どこか上の空というか、フワフワとしている感じがする。

 それでも、繋いだ手のひらには、しっかりとお互いの強い力が込められていた。

 東京はもうすっかり暑い。
 二人とも半袖だったため、歩くたびに腕の素肌がさらりと触れ合った。