口を隠したまま遼の指から目が離せなくなっていると、遼の空いた片手がスッと動いた。迫ってくる。長い指が。細い指が。骨張った指が。迫ってくるにつれて、心臓の鼓動が高鳴った。結菜との距離を縮める指は、過去の最短距離を更新し続けた。
近づく指が、結菜の手首に触れた。突然の接触に混乱する間もなく、口を覆っていた手を強制的に退けられる。顎を伝うチューハイは乾いていない。見苦しい口周りを遼に見られてしまい、強烈な羞恥心が呼び起こされた。
顔を紅潮させてしまう結菜は、無事な片手で再び口を隠そうとするが、それよりも早く遼にハンカチを押し当てられた。
ぱちぱちと目を瞬かせる。行き場を失くした手が不自然に宙に浮く。結菜の口元を凝視していた遼の目が、ゆっくりと結菜の目に向いた。
「未使用だから、安心してね」
淡々と遼は言い、結菜の手を元の位置、結菜の口元に戻した。遼の指がハンカチから離れる。結菜は顔の下半分を覆うハンカチを落とさないよう反射的に押さえてしまう。結菜にハンカチを押し付けた遼は、平然とした様子でドリンクを注文していた。
予期せぬ一連の流れに結菜は当惑する。何が起きたのかすぐには理解できず、視線がうろちょろと泳いだ。手と唇には布の感触。
結菜は充てがわれたハンカチを顔から離した。水分を吸っていた。遼はチューハイを零した結菜を気遣ってくれたのだろうが、やけに強引だった。
掴まれた手首が熱を持っている。触ってみたいと思った指に、触られた。ハンカチ越しではあったが、唇にも触られた。自覚すると、否応なしに顔が赤くなった。咄嗟にアルコールに縋りつく。
一息吐いて落ち着いた結菜は、遼に身体を向けた。半ば無理やりハンカチを押し付けてきた遼の真意は読めないが、優しさを向けてくれたのは間違いないはずだ。結菜は遼のハンカチを両手の指でギュッと握った。
近づく指が、結菜の手首に触れた。突然の接触に混乱する間もなく、口を覆っていた手を強制的に退けられる。顎を伝うチューハイは乾いていない。見苦しい口周りを遼に見られてしまい、強烈な羞恥心が呼び起こされた。
顔を紅潮させてしまう結菜は、無事な片手で再び口を隠そうとするが、それよりも早く遼にハンカチを押し当てられた。
ぱちぱちと目を瞬かせる。行き場を失くした手が不自然に宙に浮く。結菜の口元を凝視していた遼の目が、ゆっくりと結菜の目に向いた。
「未使用だから、安心してね」
淡々と遼は言い、結菜の手を元の位置、結菜の口元に戻した。遼の指がハンカチから離れる。結菜は顔の下半分を覆うハンカチを落とさないよう反射的に押さえてしまう。結菜にハンカチを押し付けた遼は、平然とした様子でドリンクを注文していた。
予期せぬ一連の流れに結菜は当惑する。何が起きたのかすぐには理解できず、視線がうろちょろと泳いだ。手と唇には布の感触。
結菜は充てがわれたハンカチを顔から離した。水分を吸っていた。遼はチューハイを零した結菜を気遣ってくれたのだろうが、やけに強引だった。
掴まれた手首が熱を持っている。触ってみたいと思った指に、触られた。ハンカチ越しではあったが、唇にも触られた。自覚すると、否応なしに顔が赤くなった。咄嗟にアルコールに縋りつく。
一息吐いて落ち着いた結菜は、遼に身体を向けた。半ば無理やりハンカチを押し付けてきた遼の真意は読めないが、優しさを向けてくれたのは間違いないはずだ。結菜は遼のハンカチを両手の指でギュッと握った。



