5月の雪が止む頃に、君が本当の笑顔を取り戻せるように。




「あ、そうだ。今日のご飯作るの手伝えよ、佐原。海緒、いま寝てるから」




俺がそう声をかけると、佐原は少し意外そうな顔をしたあと、すぐにいつもの調子で肩をすくめた。





「構わないけど、海緒ちゃんにも俺らのガッツリ飯食わせるつもり?」

「……だめか」

「当たり前でしょ。あれだけ呼吸乱れたあとのご飯がガッツリって、ちょっと想像してみなよ。キツすぎるって」






呆れたように笑う佐原のテンションは、
数分前の重苦しさが嘘のように「いつも通り」だった。



その軽口に、俺の胸の奥にこびりついていた不安が、ふっと消えていくのを感じる。








「……そっか。じゃあ、海緒にはもっと消化に良くて、優しいやつにするわ」

「そうしてあげて。俺たちのは、いつも通りの肉でいいけど」





キッチンに向かう二人の足取りは、
心なしか軽くなっていた。



一時はどうなるかと思ったけど、こうしてまた、あいつと並んで何気ない会話をしながら料理ができる。



そんな当たり前の日常が戻ってきたことが、今はただ、無性にありがたかった。