「あ、そうだ。今日のご飯作るの手伝えよ、佐原。海緒、いま寝てるから」
俺がそう声をかけると、佐原は少し意外そうな顔をしたあと、すぐにいつもの調子で肩をすくめた。
「構わないけど、海緒ちゃんにも俺らのガッツリ飯食わせるつもり?」
「……だめか」
「当たり前でしょ。あれだけ呼吸乱れたあとのご飯がガッツリって、ちょっと想像してみなよ。キツすぎるって」
呆れたように笑う佐原のテンションは、
数分前の重苦しさが嘘のように「いつも通り」だった。
その軽口に、俺の胸の奥にこびりついていた不安が、ふっと消えていくのを感じる。
「……そっか。じゃあ、海緒にはもっと消化に良くて、優しいやつにするわ」
「そうしてあげて。俺たちのは、いつも通りの肉でいいけど」
キッチンに向かう二人の足取りは、
心なしか軽くなっていた。
一時はどうなるかと思ったけど、こうしてまた、あいつと並んで何気ない会話をしながら料理ができる。
そんな当たり前の日常が戻ってきたことが、今はただ、無性にありがたかった。



