5月の雪が止む頃に、君が本当の笑顔を取り戻せるように。




「これを聞いても諦めるなら、俺はもう、何も言わない」




俺は最後にそう告げて、あいつの顔を真正面から見据えた。



伝えたいことはすべて伝えた。
あとは、あいつがこの言葉をどう受け止めるか。その一点だけだった。



沈黙が流れる中、佐原の表情がゆっくりと変わっていく。

それまでの重苦しい迷いが消え、嘘みたいにスッキリとした顔で、あいつは自嘲気味に口角を上げた。





「俺は諦める。好きだけど、大切だけど……やっぱり俺は、翔みたいに辛抱強くないからさ」




その言葉には、もう少しの迷いもなかった。

あいつはあいつなりに海緒を想い、
ぶつかり、そして自分の限界を知ったんだ。





「……そうか」





短く答える俺の声は、どこか安堵を含んでいたかもしれない。


あいつが海緒を諦めるのは、決して想いが軽かったからじゃない。


俺という男を認め、自分の不器用さを認めたからこその決断なのだと、今の言葉で痛いほど伝わってきたから。



張り詰めていた糸がふっと緩み、俺たちの間に、かつての親友としての空気が静かに戻り始めていた。