5月の雪が止む頃に、君が本当の笑顔を取り戻せるように。








ちゅっ、と小さな音を立てて離れた唇が、まだ離れたくないと名残惜しそうに震える。






『……こんなに幸せいっぱいで……怖くないキスは、初めて……です』

「……そっか」






その言葉に、彼女がこれまでどんなに辛い夜を越えてきたのかと胸が締め付けられる。


けれど、これは過去を嘆くための時間じゃない。
海緒が、自らの足で一歩前に進めたことを祝福するための時間なんだ。





『……あの、私からもお願い、いいですか』

「言ってみ」

『も、もう少しだけ……キス、したい……です……っ』





消え入りそうな声とは裏腹に、海緒の顔は今にも爆発しそうなほど赤く染まっていく。



上目遣いでそんなことを強請られて、理性を保っていられるほど俺は出来ちゃいない。





「あー……くっそ。ずるすぎる、まじで……」

『へっ……ず、ずるい……?』

「……ぜっったいに、他の男にそんな顔、見せんなよ」





少しだけ手を強引に引いて、唇を重ねて。


簡単に逃げられないように、でも恐怖を与えないようにそっと後頭部を押さえて、さっきよりもずっと深い、熱を帯びた口づけを注ぎ込んだ。






「ん……っ……」





重なり合う隙間から、海緒の小さな吐息が零れる。
触れるだけのキスとは違う、深く絡み合う感覚。


俺の舌先が彼女の柔らかな内側に触れると、海緒の体がビクッと震え、俺のシャツを掴む手に一層力がこもった。


互いの熱い吐息を分け合うたび、頭の芯がとろけるように痺れていく。



深く、深く、彼女の甘さを吸い上げるようにして。



昨日までの傷跡をすべて熱で溶かして塗り替えるみたいに、俺は何度も角度を変えて、彼女のすべてを奪い去るような深いキスを繰り返した。