5月の雪が止む頃に、君が本当の笑顔を取り戻せるように。







『……か、か、顔がっ……ち、近いです……っ』






海緒は真っ赤な顔をして、今にも破裂しそうなほど肩を震わせている。






「知ってる。わざと」

『わ、ざと……』






俺が囁くように答えると、彼女は熱に浮かされたように俺の言葉を繰り返した。


逃がすつもりなんてない。俺はさらに距離を詰め、彼女の甘い体温を間近に感じながら問いかける。






「……答え、聞かせてくれない?」






彼女は一瞬、逃げるように目をぎゅっと瞑った。

けれど、次に開かれたその瞳には、恐怖を塗り替えるような強い決意と、俺への深い信頼が宿っていた。






『……翔先輩なら、怖くないです。むしろ……嬉しい、です』






その健気な言葉に、俺の理性が音を立てて揺らいだ。
愛おしくて、もう、どうしようもない。


俺は彼女の頬にそっと手を添え、
親指でその柔らかな肌をなぞった。






「……ん。じゃあ、これは佐原に先越されたやつの上書きってことで」





あいつに触れられた記憶も、過去に負った傷も、全部俺が塗り替えてやる。


そう誓いながら、俺はゆっくりと、彼女の震える唇に自分のそれを重ねた。