5月の雪が止む頃に、君が本当の笑顔を取り戻せるように。








『気持ちは、嬉しいです。でも……先輩は、私となんか付き合っても、幸せになれません……』






海緒の口から零れたのは、拒絶というよりも、
悲鳴に近い言葉だった。


「フラれた」と捉えることもできる。


けれど、彼女の瞳は揺れ、その手は微かに震えている。これは、心からの拒絶なんかじゃない。






『体は……もう、汚れてるんです。仮に、それでもいいと言ってくださったとしても、すぐに体を重ねたりとか、そんなこと、してあげられないんです。私は……』





搾り出すような彼女の声が、夜の静寂を切り裂く。


海緒は自らの腕を抱きしめるようにして、
俺から視線を逸らした。






『付き合っても、恋人らしいことも、彼女として体を許してあげることも、すぐにはできないんです。また、翔先輩を傷つけてしまうだけです。……そんなの、嫌なんです』





自分を「汚れている」と断じる彼女の言葉が、
俺の胸に鋭いナイフのように突き刺さった。


彼女は自分の価値を否定することで、俺を遠ざけようとしている。俺を傷つけたくないという一心で、彼女自身が一番傷つく言葉を選んでいるんだ。


バカ言うな。そんなことで、俺が離れるとでも思っているのか。


俺は一歩、逃げようとする彼女との距離を詰め、その細い肩をしっかりと見据えた。