5月の雪が止む頃に、君が本当の笑顔を取り戻せるように。






色々と考えを巡らせているうちに、あんなに長いと思っていた一日は、あっという間に過ぎていった。


そしてついに、海緒に気持ちを伝えるその時がやってくる。






「……海緒、ちょっと時間、いいか?」

『はい! ちょっとだけ待ってくださいね。このスポーツドリンクを作ったら終わりですから』







手際よくドリンクを完成させると、
彼女はパッと俺の方に向き直った。


揺れるのは、見慣れたいつものポニーテール。


それなのに、なぜか直視できないほど眩しくて、心臓の音がうるさいくらいに跳ね上がる。


今まで何度も見てきたはずの姿に、どうしてこんなにも翻弄されているんだろうか。



顔が熱くなるのを必死に堪えながら、俺は彼女を促した。
部員たちの声が響くコートから離れ、二人きりになれる少し高い丘へと向かう。



一歩一歩、踏みしめる土の感触がやけに重く感じられた。






『珍しいですね。翔先輩がこうやって私を呼び出すの』





隣を歩く海緒が、弾むような声で言った。


夜の静寂に包まれた丘までの道。俺たちの足音だけが、等間隔に響いている。





「……そうか?」

『はい。なんだか新鮮で……。でも、不思議とすごく安心します』






真っ直ぐに前を見据えたまま、彼女はふわりと微笑んだ。
その「安心」という言葉が、今の俺にはたまらなく痛い。



彼女が俺を信じてくれているからこそ、この均衡を壊してしまうかもしれない恐怖が、足元をすくおうとする。


けれど、ここで立ち止まるわけにはいかないんだ。



俺は熱を持った手のひらを一度強く握りしめ、目的地である丘の頂上を見上げた。



そこから見える星空の下で、俺は彼女の「安心」のその先にある答えを、どうしても聞き出さなきゃいけない。