5月の雪が止む頃に、君が本当の笑顔を取り戻せるように。






『おかゆも、わざわざ別で作っていただいて……ありがとうございました。美味しかったです、とても』




海緒は空になった器を愛おしそうに見つめて、そう言って笑った。


その穏やかな表情と、満足げな一言に、
俺の胸の中にあった緊張がようやく完全に解けていく。





「……そっか。口に合ったならよかった」





俺が短く返すと、海緒は意気込むように拳を小さく握って、俺と佐原を交互に見つめた。





『明日は合宿最終日ですね。ご飯は私に任せてください! 皆さんのために、精一杯作りますから!』





その言葉は力強くて、過呼吸に怯えていた数時間前の彼女はもうそこにはいなかった。



どん底から立ち上がった彼女の眩しさに、俺が目を細めていると、隣から佐原が軽やかな声を飛ばす。





「海緒ちゃんのご飯、楽しみにして待ってるね」





その声にはもう、焦りも執着も混じっていない。純粋に彼女の料理を心待ちにする「仲間」の響きだった。