5月の雪が止む頃に、君が本当の笑顔を取り戻せるように。






『でも、悪い言い伝えばかりじゃないんですよ?』





少しだけ切ない空気が流れたあと、海緒はいたずらっぽく小首を傾げて、俺たちの顔を覗き込んだ。





「……?」





俺と佐原が揃って首を傾げると、彼女は夜空に浮かぶ無数の光を愛おしそうに見つめながら、言葉を繋いだ。





『その困難を乗り越えた先に、きっと最高にいい未来が待っている。……そんな、素敵な言い伝えもあるみたいです。……ふふっ、なんだか、まさに今の私たちみたいですよね』





そう言って、海緒は花が綻ぶような笑顔を見せた。


その笑顔を見た瞬間、俺の胸の中にあった最後の一片の濁りまで、綺麗に消えていくのが分かった。





「……そうだな。その言い伝え、信じてみるわ」





俺の言葉に、隣で佐原も「俺も賛成。これからは良いことしか起きないってことでしょ?」と、いつもの調子で笑いながら応じる。



暗い夜を越えて、俺たちはようやく同じ光を見上げている。


これまで流した涙も、ぶつかり合った痛みも、すべてはこの瞬間のためにあったのかもしれない。




窓の外に広がる満天の星々は、まるで俺たちの新しい門出を祝うように、いっそう強く、瞬きを増した気がした。