5月の雪が止む頃に、君が本当の笑顔を取り戻せるように。






『星って、色んな言い伝えがあるんですよ』





窓の外を指差しながら、海緒がふとそんなことを口にした。





「言い伝え?」





いかにも女の子が好きそうな話題だな、なんて思いながら、俺たちは彼女の横顔を見つめる。






『星って、時期によっては見えないものもあるじゃないですか。たとえば……天の川とか』

「たしかに、年中見えるわけじゃないもんな」

『そうなんです。それで、時々しか見えないその星を偶然見てしまった人は、少し、上手くいかないことが続いたり、悩んだりすることが増えるみたいなんです』





噂好きなやつが信じそうな、ちょっとしたおまじないのような話だ。
けれど、彼女が次に紡いだ言葉に、俺と佐原は思わず息を呑んだ。





『……私は去年、天の川を見てしまったので。だから、少しだけ乗り越えなきゃいけない壁があったみたいです。翔先輩も佐原先輩も、最近はなんだか、距離がありましたよね。きっとお二人とも、どこかでその星を見てしまったのかもしれませんね』





そう言って、海緒はいたずらが成功した子供のように、優しく、けれどどこか寂しげに微笑んだ。





「……そっか。星のせい、だったのかもな」





俺たちが険悪だったのは、誰が悪いわけでもない。ただ、そんな星を見てしまった時期だっただけ。


彼女はそうやって、俺たちの罪悪感まで星空の彼方へ逃がしてくれようとしているんだ。