『……佐原先輩は、その選択で後悔……しませんか?』
自分の気持ちを受け取ってもらうことよりも先に、海緒は佐原の心を心配していた。
彼がどれほど自分を想ってくれていたかを知っているからこそ、その想いに蓋をさせてしまうことが、彼女にとってはたまらなく心苦しいのだろう。
どこまでも相手の気持ちを汲み取ろうと必死な彼女に、佐原は優しく目を細めた。
「うん。これが一番後悔しない、俺の答えだよ」
迷いのない、柔らかな声だった。
「海緒ちゃんも翔も、俺の大切な人だからね。二人を失うくらいなら、俺は欲張らない道を選ぶよ。それが一番、俺らしいだろ?」
あいつの言葉に、部屋の中にあった微かな緊張感が、完全に溶けていくのを感じた。
誰かを好きになることは、時に誰かを傷つける。
けれど、それを乗り越えて「大切だ」と言い切れる今の佐原は、俺から見ても最高にかっこいい。
『……ありがとうございます』
海緒の目から、一筋の涙がこぼれ落ちた。
それは悲しみの涙ではなく、きっと、張り詰めていた心の糸が解けた安心の涙だった。



