5月の雪が止む頃に、君が本当の笑顔を取り戻せるように。






『……佐原先輩は、その選択で後悔……しませんか?』




自分の気持ちを受け取ってもらうことよりも先に、海緒は佐原の心を心配していた。



彼がどれほど自分を想ってくれていたかを知っているからこそ、その想いに蓋をさせてしまうことが、彼女にとってはたまらなく心苦しいのだろう。



どこまでも相手の気持ちを汲み取ろうと必死な彼女に、佐原は優しく目を細めた。





「うん。これが一番後悔しない、俺の答えだよ」





迷いのない、柔らかな声だった。





「海緒ちゃんも翔も、俺の大切な人だからね。二人を失うくらいなら、俺は欲張らない道を選ぶよ。それが一番、俺らしいだろ?」





あいつの言葉に、部屋の中にあった微かな緊張感が、完全に溶けていくのを感じた。


誰かを好きになることは、時に誰かを傷つける。


けれど、それを乗り越えて「大切だ」と言い切れる今の佐原は、俺から見ても最高にかっこいい。





『……ありがとうございます』





海緒の目から、一筋の涙がこぼれ落ちた。



それは悲しみの涙ではなく、きっと、張り詰めていた心の糸が解けた安心の涙だった。