5月の雪が止む頃に、君が本当の笑顔を取り戻せるように。





「……もう、だめだなあ。敵わないなあ……」





ポロッとこぼれたのは、憑き物が落ちたような、どこか清々しい佐原の声だった。


あいつは苦笑いを浮かべながら、ベッドの上の海緒へと一歩歩み寄る。





「俺は悪くないって言ってくれたけどね、海緒ちゃん。……でも、少なからず責任はあるんだよ。だから、ちゃんと謝らせてほしいな」

『そっ、そんなことっ……!』





海緒は弾かれたように顔を上げ、また自分を責める言葉を紡ごうとした。佐原が謝るのを、必死に阻止しようとしている。


俺は彼女の言葉を遮るように、けれど威圧感を与えないよう、努めて優しく、冷静に声をかけた。





「……海緒。最後まで聞いてやって」





そんなことない、なんて言わせない。



これは佐原がこれからの自分自身を許すために、そして海緒とまた向き合うために、どうしても越えなきゃいけない壁なんだ。





『は、はい……』





俺に諭され、海緒は戸惑いながらも小さく頷き、口を閉じた。
部屋の中は、ふわりと温かい卵がゆの湯気に包まれている。



その様子を静かに見守りながら、親友が紡ぎ出す「最後のけじめ」を待った。