5月の雪が止む頃に、君が本当の笑顔を取り戻せるように。






『それに……廊下で呼吸がおかしくなっているところ、佐原先輩にも見られてしまいましたよね。あれも、責任を感じさせてしまうきっかけになったと思います』





海緒は、まるですべてを見透かしているような穏やかな声で続けた。
図星を突かれた佐原は、何も言い返せずにただ黙り込んでいた。




「………」





あいつの沈黙を肯定と受け取ったのか、
海緒はさらに言葉を重ねた。





『でも、あれは私が勝手に考えすぎてなってしまっただけで……佐原先輩を追い詰めたくてなったわけではないんです。その、最近は過呼吸にもなりやすくなっていて。……不安にさせてしまっていたら、申し訳ないです』






自分の体が悲鳴をあげたことすら、彼女にとっては「他人に迷惑をかける原因」でしかないのだ。


被害者であるはずの彼女が、加害者であるはずのあいつに対して「不安にさせて申し訳ない」と頭を下げている。



そのあまりに純粋すぎる優しさは、俺の胸にも、そして隣で立ち尽くす佐原の胸にも、痛みとなって深く突き刺さった。



海緒は、本当に……強くて、脆い。



俺は彼女の細い肩を見つめながら、トレイを持つ手に、より一層力を込めた。