醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。

 沈黙の後、彼は観念したように息を吐く。

「セドリック・レイディン。俺は、レイディン帝国の第三皇子だ」
 低く、名を名乗る声。

 波音が、やけに大きく聞こえる。
「正体を知ったからには死んでもらう」」

 セドリックは一歩近づき、その手がエリシアの真っ白な首にかかる。

 指先の温度が、はっきりと伝わる。
 締め付けは、まだ弱い。だが、逃げられない距離。

 エリシアは、抵抗しなかった。
 恐怖も、驚きも、もう湧いてこない。

 ただ、口元にかすかな笑みを浮かべる。

(やっぱり味方じゃなかったのね。でも、もういいわ)