醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。

 パトリスの言葉が、神殿の静けさを切り裂く。

「聖女、なのに?」
 その一言が、エリシアの中で封印されていた記憶の扉を押し開いた。

 クルーシー侯爵家の薔薇園。

 春の日差しが柔らかく降り注ぎ、花の香りが風に乗って漂っていた。
 遊びに来た小さなルナは無邪気に笑い、まるで世界が自分のために輝いているかのように手を伸ばした。

 その手は、一本の棘に触れ彼女の指を切った。

 泣き出した王女に、エリシアは無意識に手を伸ばす。
 その指に触れた途端、傷はふっと消え、血も跡形もなく消え去った。

(見間違いかと思っていたけれど)

 胸の奥で、感覚がはっきりと蘇る。